【安全管理】リスクアセスメントのリスク低減措置の優先順位 ~設計・計画→工学的対策→管理的対策→保護具~
私が、労働安全コンサルタントの資格取得勉強の中で、危険・有害リスク対策を考えるうえで最も勉強になったと感じたのは、今回のテーマである「リスク低減措置の優先順位」とまたの機会に違う記事で紹介しようと考えている「機械の安全化の手順」です。
私が、技術士(電気電子部門、機械部門、総合技術監理部門)として活動する中においても、この基本的な考え方は、常に活かすように心掛けいて、安全管理に役立てています。
今回は、「リスク低減措置の優先順位」について、4つの順位について紹介します。
1.リスク低減措置の優先順位
「リスクアセスメント」という形式に沿ったやり方を実施するかどうかは別として、「リスクアセスメントの基本的な手順」の中の手順4に、「リスク低減措置の実施」があります。
なお、リスクアセスメントについては、過去記事の「【安全管理】ヒューマンエラーの原因と対策 ~ミステイク・スリップ・ラプス~」で紹介しています。末尾にリンクを貼りましたので、興味のある方は、確認してみてください。
リスク低減措置の優先順位を以下に順序(1)~(4)まで、紹介します。(1)が最も優先順位が高く、(4)が最も優先順位が低いというもので、(4)は、他の対策がとれない場合にリスク低減効果は低いが最終手段の位置付けで実施するものです。
(1)設計や計画段階の措置
危険な作業の廃止・変更、危険性や有害性の低い材料への代替、より安全な施工方法への変更等
<解説>
設計・計画段階の対策が極めて重要です。この段階で危険性や有害性を排除してしまえば、後は何も心配あません。
電気の設備点検であれば、停電して作業をすれば、感電の危険性はなくなりますが、工場の稼働の関係でどうしても日中に停電できないのであれば、無理して活線で作業をせずに、夜間や週末の土日に停電でして作業することで、感電のリスクが無くなります。
令和3年4月15日、東京都新宿区のマンション地下1階駐車場において、内装業者が天井ボードの貼り替え作業を行っていたところ何らかの原因で二酸化炭素消火設備が作動し、取り残された作業員4名が死亡、1人が意識不明の重体となる事故が発生しました。
この事故においても、二酸化炭素消化設備を「人体に安全な新しい消火ガス」である不活性ガス(IG-541)消火システムに置き換えていれば、上記のような悲惨な事故は起きませんでした。
但し、設計・計画段階の対策において、上記のように夜間の作業割り増しや有害性のない消化システムへの取替には、コストが発生します。
コストが経営上において許容できないのであれば、以降のリスク低減措置の対策をしっかりとるべきです。
(2)工学的対策
ガード、インターロック、安全装置、局所排気装置など
<解説>
機械・設備の防護板の設置・作業台の使用や局所排気装置などの設備的対策を行います。
この内容は、後に記事化を考えている「機械の安全化の手順」の根幹と直結する内容です。
ここでは、上記の用語について紹介します。
a.ガード
機械の安全防護策で囲いのことです。ガードには、「固定式ガード」、「可動式ガード」、「調整式ガード」、「インターロック付きガード」、「施錠式インターロック付きガード」、「起動機能インターロック付きガード」といった様々な種類があります。
旋盤機械のガード
b.インターロック
ある操作を行う時、誤操作や確認不足により、適正な手順以外による操作が行われるのを防止したり、正常な製造・運転の行われる条件を逸脱した時、自動的に当該設備に対する原材料等の供給を遮断するなど製造や機器の運転を制御するものです。
インターロックプラグ
c.安全装置
安全装置とは、緊急の際に人命や財産といった他のものに被害を与えないようにする機構のことです。機械装置、特に大きな動力を用いて動作している機械は、コントロールを離れて動作した場合には大変危険であり、その危険を未然に防止するためのものが安全装置です。
自動プレスの光学式安全装置
d.局所排気装置
工場や作業場、実験室などで発生する、粉じんや有機溶剤、ガスといった人体に有害な物質を、作業者が吸い込まないために、管(ダクト)によって有害物質を屋外に排出する装置です。 発生源のそばに空気の吸い込み口(フード)を設け、常に吸引するような局所的な気流をつくることで、室内に有害物質が拡散する前に排出します。
プッシュプル型排気装置
以上のように、危険性や有害性は存在するが、それから人を工学的にどう守るかといった低減措置になります。
(3)管理的対策
マニュアルの整備、立ち入り禁止措置、曝露管理、教育訓練等
<解説>
ここから人間系の対策が絡んできました。人間は、間違い(ヒューマンエラー)を起こします。
曝露管理は、福島第1原発事故の現場作業者をモニタリングする放射線への曝露管理が有名です。
教育訓練は、過去の労災事例を教訓にするのが、最も効果的です。過去記事で「【安全管理】ヒヤリハットや労働災害事例を活用した事故防止対策 ~4Mと安全文化~」に紹介しています。末尾にリンクを貼りましたので、興味のある方は、参考にしてみてください。
(4)個人用保護具の使用
上記の(1)~(3)の措置を講じた場合においても、除去・低減できなかったリスクに対して実施するものに限られます。
<解説>
(1)~(3)でリスクを除去してしまうのがベストですが、なかなかそうもいかなかった場合の最終手段となります。
戦争でいえば、あらゆる外交手段で、手を尽くしたが、領土侵略を繰り返す反社会的な独裁国家には通じず、我が国に侵略して、いよいよ盾と武器を持って戦わなければ、ならない状況に似ています。
停電作業においては、高圧主回路の停電は確保したが、一部の充電箇所は病むを得ず残ったため、電気用ゴム手・ゴム長を着用して、充電部に絶縁用防具を取付て作業をすることが該当します。
高所作業では、ロボットを活用し作業をさせたが、最終確認は、人間が「墜落制止用器具」を着用し、最終確認することが該当します。
なお、2022(令和4)年1月2日から新基準の「墜落制止用器具」に完全移行します。まだ、高所作業用として用意されていない方は、過去記事で『【安全管理・安全対策】安全帯が「墜落制止用器具」に変わりました! ~特別教育での着用体験で得た「フルハーネス」選びのポイント~』を紹介しており、末尾にリンクを貼りましたので、参考にしてみてください。
2.まとめ
リスク低減措置の優先順位について、4つの順位について解説してみました。
やはり、「設計や計画段階の措置」で危険性や有害性を取り除くのが一番効果的です。
そのうえで、現実的な対策としては、機械や電気に頼る「工学的対策」がリスク低減に有効です。
人間系の低減措置としては、「管理的対策」で過去の災害事例の教訓を活かし、如何に標準的なやり方を整理し活用できるかに尽きます。
そのうえで、最終手段としての保護具を定期的に点検し、いざというときに備えておきましょう。
以上、労働安全コンサルタントとして、リスク低減措置の優先順位について紹介させていただきました。
またの機会に、技術士(機械部門)として、「機械の安全化の手順」について、紹介します。
リスクアセスメントを取り上げた記事:【安全管理】ヒューマンエラーの原因と対策 ~ミステイク・スリップ・ラプス~
https://www.licenseengineer.com/archives/4840
労災事例の活用を取り上げた記事:【安全管理】ヒヤリハットや労働災害事例を活用した事故防止対策 ~4Mと安全文化~
高所作業の新基準「墜落制止用器具」に関する記事:【安全管理・安全対策】安全帯が「墜落制止用器具」に変わりました! ~特別教育での着用体験で得た「フルハーネス」選びのポイント~
https://www.licenseengineer.com/archives/563
以上
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