【電気設備技術基準】電路の絶縁 ~電気回路の絶縁抵抗測定(メガ)の規定値と判定・対策~
電気回路の絶縁が保たれていなと短絡電流や地絡電流の故障電流が流れて、機器の破損、火災事故、及び感電事故の危険性があります。
電気回路の絶縁性能は、絶縁材(電線被覆や碍子など)の劣化により低下したり、雨天などの環境にも左右されます。
電気回路の絶縁について『電気設備に関する技術基準を定める省令』による規定や、絶縁抵抗測定の電圧レンジ・判定・対策について解説します。
1.電路絶縁の原則(電技第5条)
電路は、十分に絶縁されていなければ漏洩電流による火災および感電の危険が生じる等の種々の障害が生じるため、電技で以下のように規定しています。
(1)電路は、対地から絶縁しなければならない。但し、構造上やむを得ない場合であって、通常予見される使用形態を考慮し危険の恐れがない場合、又は、混触による高電圧の侵入等の異常が発生した際の危険を回避するための接地その他の保安上必要な措置を講ずる場合は、この限りでない。
(2) (1)にあっては、その絶縁性能は、事故時に想定される異常電圧を考慮し、絶縁破壊による危険の恐れがないものでなければならいない。
(3)変成器内の巻線と当該変成器内の他の巻線との間の絶縁性能は、事故時に想定される異常電圧を考慮し、絶縁破壊による危険の恐れがないものでなければならいない。
要するに、電路の対地間、巻線の1次と2次間は、絶縁を十分に保たなければ、ならないと言っています。
2.低圧電路の絶縁性能(電技第58条)
低圧とは、直流で750V以下、交流で600V以下の電圧です。
(1)測定可能な電路の絶縁抵抗値
低圧の電路においては、電線相互間および電路と大地との間の絶縁抵抗値は、開閉器または、過電流遮断器で区切ることができる電路毎に、表1の絶縁抵抗値以上を有すること。
表1.低圧電路の絶縁抵抗値
(2)絶縁抵抗の測定が困難な場合(解釈第14条)
使用電圧が低圧の電路であって、絶縁抵抗測定が困難な場合は、表1の電路の使用電圧の区分に応じ、それぞれの漏洩電流を1mA以下に保つこと。
つまりメガを用いることが困難な場所では、漏れ電流計(クランプ式)が一般的に用いられる。
(3)低圧電線路の絶縁性能(電技第22条)
低圧電線路の絶縁部分の電線と大地間および電線の心線相互間の絶縁抵抗は、使用電圧に対する漏洩電流が電線1条あたりについて最大供給電流の1/2,000を超えないようにしなければならない。
図1.漏れ電流回路図
漏れ電流Ig=(変圧器容量からの最大電流Im/2,000)×条数
なお、図1のように中性点等が接地されている回路においては、接地を回路から外してからメガを測定する必要があります。
3.高圧電路の絶縁抵抗測定
高圧及び特別高圧の電路においては、絶縁耐力試験により電路と大地間に連続した試験電圧を印加し、これに耐えることが規定されている。(解釈第14条)
絶縁抵抗値に関しては、技術基準上の規定は無いが、一般的には、以下の内容で健全性を確認しています。
高圧の電路及び機器の絶縁抵抗測定は1,000V以上の絶縁抵抗計(メガ)を使用し、絶縁耐力試験の回路毎に測定します。絶縁抵抗値の目安としては、6kV回路では、6MΩ以上を確保するようにしています。
高電圧の巻線や電力ケーブルについては、5000Vや10000Vを印加して、メガ値で状態を確認したり、吸湿度合を見極めるケースもあります。
4.回路電圧毎のメガ測定電圧(電圧レンジ)
回路電圧毎にメガ測定電圧に違いがあります。一般的に低圧回路には500Vメガ、高圧回路以上には1000Vメガを使用し、24V回路などの弱電回路には、250Vメガ以下を使用することで、メガ測定による機器の破損を防止します。但し、上記の直流電圧を印加しただけで壊れるようであれば、相当に絶縁劣化が進行しているものと言えます。
表2.回路電圧毎のメガ測定電圧(電圧レンジ)
5.メガの判定と対策の要点
・メガの有効性については、絶縁を評価する以外にも、電気設備の点検や補修などの作業が修了し、電圧課電前に、作業接地の外し忘れや、施工不良などを確認する最終チックとしても有効です。これにより、電圧印加時の電気設備の破損や感電などの災害を防ぎます。
・電気設備の維持すべきメガ(絶縁抵抗値)の規定値を上述しましたが、この値は最低限であり、低圧回路では2MΩ以上、高圧回路では100MΩ以上の社内管理値を設けて、設備管理している会社もあります。
・メガ値が悪い場合には、ケーブルなのか機器側なのかを切り離し再測定を行い、不良箇所を特定して、交換などの予防対策を実施する必要があります。
・不良箇所の交換などの対策をケチって、漏電による火災や人身事故を発生させたのでは、膨大な費用がかかり、本末転倒です。
・対策として、ただ単純に電気部品の交換や電気設備の取替をしただけで済ませてしまって、絶縁劣化の進行要因を無視し続けるのであれば、漏電障害は再発します。
・絶縁劣化要因が、湿気や粉塵などの環境要因によるものなのか、電気的・機械的・熱的などの要因なのかによって、対策が変わってきます。
・例えば、湿度が高すぎる環境であれば、換気対策や除湿対策を部品交換と一緒に施してやったり、起動停止回数が多いヒートサイクルによる機械的な要因であれば、設備の運用を見直し、起動停止回数を減らす運用に見直したり、電気設備の絶縁材を強化するなどの対策が考えられます。
・以上のように、電気設備の絶縁性能は、奥が深く、健全な設備を維持することで火災や感電を防止するのが、電気設備を管理するうえで、極めて重要だということをお伝えしたくて、この記事を掲載しました。(またの機会に「絶縁劣化のメカニズム」や「電気設備の絶縁診断技術」についても紹介してみたいと考えています)
関連記事:【電気設備技術基準の解釈】絶縁耐電圧試験 ~高圧・特別高圧電路及び低圧機器の絶縁耐力試験~
以上
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