先の記事で、源泉かけ流し温泉の知識として、『循環風呂や塩素殺菌風呂との違いや見分け方』について紹介しました。
今回は、源泉かけ流し温泉には個性がありますが、その源泉力を測るバロメータとして、「泉源からの湧出形態」と「温泉の還元力」を解説します。
1.泉源と湧出形態
泉源は、「自然」と「掘削」に分かれて、「自然」は地表に自然に湧き出るもので、「掘削」は地下にボーリング掘削したものです。
源泉の湧出形態には、「自然湧出泉」、「掘削自噴泉」、「掘削揚湯泉」の3パターンに分かれます。
源泉力の順位は、「自然湧出泉」が最も高く、次に「掘削自噴泉」、最後に「掘削揚湯泉」といったところです。
「自然湧出泉」が源泉力として最も高いのは、温泉は空気に触れたりポンプ動力により攪拌されることにより酸化され泉質が劣化するためです。
また、「自然湧出泉」がトマトに例えると完熟トマトの状態と言えます。十分に熟成したまろやかな肌触りと、還元力に優れた効能が期待できます。希少価値が最も高い源泉と言えます。
一方、「掘削自噴泉」は、水圧、湯量に恵まれているため、掘削後、自噴、つまり自力で湧出する温泉です。トマトに例えるなら、「オレンジ色」の温泉と言ったところです。
最後の「掘削揚湯泉」は、自力で地表に湧き出ることができないため、ポンプ動力で汲み上げる温泉のことです。トマトに例えるなら「緑色」の温泉と言ったところです。最近の都市部の新興温泉の大半は、「掘削揚湯泉」です。地下の千m程度から水中モータポンプでポンプアップするため、源泉が攪拌され、汲んでる途中で酸化し劣化が進行します。
2.自然湧出泉の代表例
「天下の名湯」と言われてきた草津温泉のシンボルは、温泉街の中央で毎分4,000リットルの大量の湯を噴出する「湯畑」です。
他に自然湧出量が多い泉源としては、登別温泉(北海道)、須川温泉(岩手県)、玉川温泉(秋田県)、野沢温泉(長野県)、別府温泉(大分県)などがあります。
かつて、徳川家康を虜にした「熱海温泉」は、現在、人口間歇泉です。これは、地震や温泉乱掘のため水位が低下して、自然湧出泉が得られなくなりました。このように、時代とともに自然湧出泉が得られなくなるところは他にも多くあり、上記に記載した自然湧出泉の方が稀で貴重な存在だと言えます。
3.温泉の還元力
温泉の泉質を科学的に分析してみましょう。
近年、老化やがんの原因ともなる活性酸素を消去する抗酸化能力を持つ果物、野菜、きのこなどの食品や飲料水が注目を集めています。
この活性酸素は、物質を酸化させる。つまり錆びさせる悪い働きをします。
鉄が錆びるのも、生ものが腐るのも、酸化するのが原因です。
一方、酸化の反対は還元ですが、還元は酸化と逆の働き、すなわち老化や錆、腐敗を防ぐだけではなく、人間の細胞を活性化させ、肌を若返らせてくれるといった効果をもたらします。
昔から、温泉に浸かると若返るといわれてきたのは、本来の温泉には還元力があったからにほかならないのです。
地表に湧き出す前の温泉は、元々、還元系の性質を持っています。
掘削し地下深くから湧き出したりポンプアップして空気に触れ、時間が経過したり、塩素(殺菌剤)を入れたりすると性質が酸化系に変わっていきます。いわゆる温泉の老化が進みます。
よって、「自然湧出泉」のかけ流しが、酸化系を維持し、「最も温泉力」があると言えるのです。
4.還元系と酸化系を判定する科学的測定
浴槽に注がれた温泉がどのくらい還元力を保っているか、または、どれだけ酸化系になってしまっているかが分かれば、その温泉の「鮮度」を知ることができます。
それを科学的に測定する方法が酸化還元電位(ORP=Oxidation-Reduction-Potential)という評価方法です。
原理は、酸化反応過程で失う電子の濃度変化を測定するというものです。
簡単にいえば、物質が電子を失うことを「酸化」、電子を得ることを「還元」とし、どちらに振れているかをORP計で測ります。表示は、ミリボルト(mV)単位で示されます。
目安として塩素が入っていないペーハー(pH)が中性のミネラルウォーター+200mVを基準として、それより数値が高ければ酸化系、少なくなれば還元系です。
還元力の高い温泉では、この数値がマイナスになることも少なくありません。
ちなみに地方の水道水は+500mV程度、東京の水道水は+700mV以上あります。
5.温泉力を測るバロメータのまとめ
「自然湧出泉」は、酸化還元電位で評価すると還元系であり、数値的に見ても還元力の高さを示します。
いわゆる、「自然湧出泉」は、肌触り感覚もよいのですが、還元力(効用)の高さが科学的な数値でも示されており、泉質が優れていると言えるのです。
還元力の高い「温泉力」のある源泉かけ流し温泉に入浴し、心と体と頭をリフレッシュして、気持ちを含めた心技体の「若返り」を図り、資格勉強や仕事の活力を湧き出しましょう。
以上
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