【電気危険防止】電気機械器具と仮設配線 ~労働安全衛生規則の感電事故防止〔その1〕~
労働安全衛生規則(命令のうち省令)の第5章では、「電気による危険の防止」が記されています。
大きく分けて、「電気機械器具」や「配線」の設備的なルール、「停電作業」や「活線作業」などの作業的なルール、「作業管理」に関する管理的なルールの3つが記されています。
今回は、「電気機械器具」や「配線」の設備的なルールについて、労働安全コンサルタントの視点で紹介します。
なお、法令の条文を用いて解説しますが、条文は難解なため、最後に<今回のまとめ>で要約しておりますので、そこだけ見てもポイントを理解できるようにしています。
第1節 電気設備器具
第329条 電気機械器具の囲い等
事業者は、電気機械器具の充電部分(電熱器の発熱体の部分、抵抗溶接機の電極の部分等電気機械器具の使用の目的により露出することがやむを得ない充電部分を除く。)で、労働者が作業中又は通行の際に、接触(導電体を介する接触を含む。以下この章において同じ。)し、又は接近することにより感電の危険を生ずるおそれのあるものについては、感電を防止するための囲い又は絶縁覆いを設けなければならない。ただし、配電盤室、変電室等区画された場所で、事業者が第三十六条第四号の業務に就いている者(以下「電気取扱者」という。)以外の者の立入りを禁止したところに設置し、又は電柱上、塔上等隔離された場所で、電気取扱者以外の者が接近するおそれのないところに設置する電気機械器具については、この限りでない。
<要約>要するに、電気取扱者以外の労働者が電気機械器具の充電部へ接近することにより感電する恐れのある場所に、囲いまたは絶縁覆いが必要であるということを言っています。事務所等の屋内外の高圧受電設備がキュービクルの囲いで覆っているのがこの例です。但し、柱上等は除外されています。
図1.高圧受電用キュービクルと電柱
「接近」という言葉が出てきますが、「近接」という言葉もあります。「接近」は、広い意味で充電部が近く、第3者が近づくことを意味し、「近接」は、更に非常に近いことを意味します。
第331条 溶接棒等のホルダー
業者は、アーク溶接等(自動溶接を除く。)の作業に使用する溶接棒等のホルダーについては、感電の危険を防止するため必要な絶縁効力及び耐熱性を有するものでなければ、使用してはならない。
<解説>溶接棒等のホルダーについては、破損していないか使用前に点検し、破損している場合は交換が必要です。
図2.溶接棒ホルダー
第332条 交流アーク溶接機用自動電撃防止装置
事業者は、船舶の二重底若しくはピークタンクの内部、ボイラーの胴若しくはドームの内部等導電体に囲まれた場所で著しく狭あいなところ又は墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのある高さが二メートル以上の場所で鉄骨等導電性の高い接地物に労働者が接触するおそれがあるところにおいて、交流アーク溶接等(自動溶接を除く。)の作業を行うときは、交流アーク溶接機用自動電撃防止装置を使用しなければならない。
図3.交流アーク溶接機用自動電撃防止装置の構成と動作
<補足>ボイラーの胴の内部で手動で交流アーク溶接を行うときは、狭くても自動電撃防止装置が必要であり、自動溶接の場合には、自動電撃防止装置が不要となる。
第333条 漏電による感電防止
事業者は、電動機を有する機械又は器具(以下「電動機械器具」という。)で、対地電圧が150Vをこえる移動式若しくは可搬式のもの又は水等導電性の高い液体によつて湿潤している場所その他鉄板上、鉄骨上、定盤上等導電性の高い場所において使用する移動式若しくは可搬式のものについては、漏電による感電の危険を防止するため、当該電動機械器具が接続される電路に、当該電路の定格に適合し、感度が良好であり、かつ、確実に作動する感電防止用漏電しや断装置を接続しなければならない。
図4.漏電ブレーカー
2 事業者は、前項に規定する措置を講ずることが困難なときは、電動機械器具の金属製外わく、電動機の金属製外被等の金属部分を、次に定めるところにより接地して使用しなければならない。
一 接地極への接続は、次のいずれかの方法によること。
イ 一心を専用の接地線とする移動電線及び一端子を専用の接地端子とする接続器具を用いて接地極に接続する方法
ロ 移動電線に添えた接地線及び当該電動機械器具の電源コンセントに近接する箇所に設けられた接地端子を用いて接地極に接続する方法
二 前号イの方法によるときは、接地線と電路に接続する電線との混用及び接地端子と電路に接続する端子との混用を防止するための措置を講ずること。
三 接地極は、十分に地中に埋設する等の方法により、確実に大地と接続すること。
<要約>漏電用遮断装置の設置が困難な場合には、電動機械器具の金属製外枠や器具自体の外側金属部分を接地しなければならない。
第334条 適用除外
前条の規定は、次の各号のいずれかに該当する電動機械器具については、適用しない。
一 非接地方式の電路(当該電動機械器具の電源側の電路に設けた絶縁変圧器の二次電圧が300V以下であり、かつ、当該絶縁変圧器の負荷側の電路が接地されていないものに限る。)に接続して使用する電動機械器具
二 絶縁台の上で使用する電動機械器具
三 電気用品安全法(昭和三十六年法律第二百三十四号)第二条第二項の特定電気用品であつて、同法第十条第一項の表示が付された二重絶縁構造の電動機械器具
<要約>絶縁変圧器の負荷側に電動機械器具を接続したり、絶縁台の上で使用する電動機械器具は、感電防止用漏電しや断装置や接地が適用除外されます。絶縁変圧器とは、一次と二次を絶縁し、異常電流などを侵入しないようにする変圧器のことで、ほとんどの変圧器がこれですが、一部、一次と二次巻線が接続させている単巻変圧器があります。単巻変圧器では二次巻線が漏電した場合、一次巻線にも漏洩電流が流れ続けて、異常範囲が拡大します。
図5.単巻変圧器と絶縁変圧器の違い
第2節 配線および移動配線
第338条 仮設の配線等
事業者は、仮設の配線又は移動電線を通路面において使用してはならない。ただし、当該配線又は移動電線の上を車両その他の物が通過すること等による絶縁被覆の損傷のおそれのない状態で使用するときは、この限りでない。
<要約>通路面を横断して仮設の配線を使用する場合は、絶縁被覆を損傷する恐れがないように金属管等に収める必要がります。金属管等が車両の荷重に耐えうる場合には、車両を通過を禁止する必要はありません。
<今回のまとめ(要点)>
・電気取扱者以外の労働者が電気機械器具の充電部へ接近することにより感電する恐れのある場所に、囲いまたは絶縁覆いが必要である。例外として、柱上等は除外。
・アーク溶接の溶接棒ホルダーは、感電防止のため、絶縁効力と耐熱性を備えていなければならない。使用前点検が重要です。
・ボイラー内部などの狭隘なところや高所作業(2m以上)で交流アーク溶接作業を行うときは、交流アーク溶接機用自動電撃防止装置を使用しなければならない。
・対地電圧が150Vを超えるものや湿気や鉄板など導電性が高い場所での可搬式電動機械器具を用いる際には、感電防止のため、感電防止用漏電遮断装置を接続しなければならない。
・漏電用遮断装置の設置が困難な場合には、電動機械器具の金属製外枠や器具自体の外側金属部分を接地しなければならない。
・絶縁変圧器の負荷側に電動機械器具を接続したり、絶縁台の上で使用する電動機械器具は、感電防止用漏電しや断装置や接地が適用除外されます。
・通路面を横断して仮設の配線を使用する場合は、絶縁被覆を損傷する恐れがないように金属管等に収める必要がります。金属管等が車両の荷重に耐えうる場合には、車両を通過を禁止する必要はありません。
以上により、感電事故の防止対策を施し、労災を防ぎましょう。
以上
関連機器:【電気危険防止】停電作業と活線作業・活線近接作業(絶縁用保護具・防具、活線作業用器具・装置) ~労働安全衛生規則の感電事故防止〔その2〕~
https://www.licenseengineer.com/archives/6588
関連記事:【電気危険防止】特別高圧活線作業~低圧活線近接作業、及び作業管理(使用電圧に対する接近限界距離) ~労働安全衛生規則の感電事故防止〔その3〕~
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